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わかっていく苦しみとわからなくなる喜び
わかっていく苦しみとわからなくなる喜び
研究ほどおもしろいことはない.
なぜおもしろいのか,それは研究が「わかっていく苦しみ」と「わからなくなる喜び」という不思議な体験を通して,新たな価値を作り出すことだからだ.
大学院に入ると難しい論文や本を読んだり,講義を聴いたりする.
はじめは何のことなのかがさっぱりわからない.
この言葉ってどんな意味で使っているのだろうとか,どうしてこんなことからあんなことが言えるのだろうとか,こんな研究のどこが現場に役立つのか,そもそもなんでそんな研究をしているのだろう,数多くの疑問が始終湧いてくる.
しかししばらくたつと初期の疑問が氷解し,いろいろなことが見えてくる.
これは自分の成長を実感できるすごくうれしい時期である.
ところがいろいろなことがわかりすぎると,「こんなことをしても,すでに・・・さんが完全に説明している」とか,「自分の職場での自慢の実践はすでに数十年前に行われていた」などと感じるようになる.
つまり自分のやることはもう残っていないような気になってきてしまう.
大学院はお勉強するところではなく,自分の研究をまとめオリジナルなものを作っていくところなので,この状態,つまり「わかっていく苦しみ」はそうとうにつらい.
さてそういう中で,自分の抱えている問題を今までに勉強してきたことで説明しようとするとさっぱりそれができない,腑に落ちない,そんな時が訪れる.
また職場で頭裏前に行ってきたことがなぜうまくいくのか不思議になってきたりもする.
場合によっては,完璧だと思って心酔していた先人の論文がよく読んでみるとわからなくなってきたりする.
要するに「わからない」という状態になる.
こうした状態は実はチャンスなのだ.
つまり上の状態は,自分の抱えている問題はこれまでの知見では説明できない部分を含んでいること,当たり前としてやってきたことが誰の理論でもきちんと説明できないこと,先人の論文には何か本質的なレベルで穴があることを示している.
つまりこれが「わからなくなる喜び」なのだ.
こうした「わかっていく苦しみ」,「わからなくなる喜び」を何度も繰り返すワンダーワールドで,自分を成長させ,新しい価値を作り出してみませんか.