E-learningについての反省

E-learningという分野について完璧に誤解していた,ようなので,ここに反省を込めて書く.

「E-learningが・・・だ」という言い方はやめた方がよい.これはE-learningが完全に一つの領域として確立している,あるいはまもなく確立するからだと思う.

正直言って,E-learningについてあまりいいイメージを持ったことがなかった.何となくコンセプト自体が陳腐だとか,いわゆる工学手法により教育を画一化するとか,そういうイメージを持っていた.それはそういうE-learningを多数見てきたからだ.

しかし27日に私が代表をしている科研費の研究会で,電通大の植野真臣さんの研究を聞いて,正直打ちのめされた.Vygotkyan,協調などの学習科学のコアコンセプトが,LMSとともに見事な形でまとめ上げられていた.植野さんは確率のプロ中のプロであり,特にBayes統計学の先端的利用と理論の拡張で国内外ですばらしい業績を持っている理論家であることは知っていた.しかし,こうした知見をさらに教育のために展開し,見事なE-laerningのシステム,SAMURAIを構築されている.これはもうかれこれ10年前からやっているそうなのだ.これを知らなずに彼の話を聞いた参加者は打ちのめされ,自分の不明を恥じた.知っている人に聞くと,植野さんがこれだけやったので,LMSはみんな手を出さなくなるくらいになっているとのこと.よくわかる.

確立した分野というのは,それ自体がいいとか,悪いとか言うことはほとんど無意味だ.たとえば,哲学はだめだとか,認知科学は未来があるとか,そういう言明は基本的に意味がない.このような言明は「悪い哲学研究を見たことがある」とか,「よい認知科学の研究に触れた」程度のことに過ぎない.

私たちのやることは,その分野自体がどう思われているのかではなく,そこでBestな仕事を目指すことだけなのだ.そういう,ある意味当たり前のことに気づいた次第.

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