ダイナミカル宣言VII:発達心理学会ラウンドテーブル

3月終りに発達心理学会の大会がありました。そこで北海学園大学の小島さんが「制約と創発」の関係についてのラウンドテーブルを企画しました。小島さんから声をかけられて発表してきました。
特集「知の起源」で私は「認知の創発的性質」という論文を書き、そこで認知の4つの性質を挙げました。

  • 生成性:その場で(online)で認知が生成される。
  • 冗長性、重奏性:1つの認知の背後には複数の認知が協調的、競合的に動いている。
  • 局所相互作用:中央制御は、制御の1つのリソースに過ぎない。
  • 開放性:認知システムは内部と外部に分散したシステムである。

こうした内容に発達心理学の文献を絡ませ、以下の提案を行ってきました。

  • 認識の再検討:認知システムは使えるものは何でも使うどん欲なシステムである。
  • 発達概念の再検討:1つの段階には1つの認知のモードが対応すると言うわけではない。いくつもの関連する、あるいは拮抗するモードが並列的に、重奏的に動いている。
  • 発達理論の再検討
    1. theory approach: 領域固有の素朴理論は存在するだろうが、それに支配されているわけではない。この理論は様々な経験的知識と絶えず関連を持ちつつ、影響をおよぼす。
    2. 制約アプローチ:制約は弱い影響(好みとか、偏り程度)の影響を与えているに過ぎない。何かを完全にシャットアウトすることは稀だろう。
  • 研究方法の再検討:一貫した反応はわずかであり、様々な変動、揺らぎが存在している。これらを「誤差」として取り扱ってはならない(関連する議論としてはここを参照)。

そのときの資料をPDFで ここ(パワーポイントファイルです)に置いておきます。 質疑応答もおもしろかったのですが、ややテクニカルなので飛ばして、本の紹介をします。この発表を行うのにいくつかの本を読みましたが、その中で非常におもしろかったのは、

です。 発達心理学はこの期ととんとご無沙汰でしたが、確実に新しい展開を向かえていることがわかりました。Microdevelopmentは、生成性、冗長性、重奏性をまさに正面から捉え、発達心理学、教授心理学に新しい展開をもたらそうとするものです。あまりにおもしろいので、今年度の大学院のゼミで使うことにきめました。Hearing Gestureは、冗長性、重奏性と開放性に深く関係した議論を行った著書です。これもまたおもしろかったので、本学英米文学科の野辺先生といっしょに輪読会を行いました。

世の中変わってきました、ダイナミカルです。

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