「類似と思考 改訂版」出版の経緯について

近況にも書きましたが、1996年に認知科学モノグラフシリーズ(共立出版)として出版した「類似と思考」が、ちくま学芸文庫として2020年3月初旬に出版されました。

最初の本は、増刷はおそらく1回はありましたが、いつまで売られていたのかはよくわかりません。だいぶ前にもう絶版となり、アマゾンあたりでは古本が長らく売られていました。そういう次第で、筑摩書房からお話があった時には、とても嬉しい気持ちになりました。また学芸文庫というのは、とんでもなく格調高い本が目白押しであり、こういうものの(むろん端っこですが)中に自著が入るというのは、大変にありがたいこととも思いました。加えて元本があるのですから、補稿くらい書いて終わりにすればいいかと、二つ返事で引き受けました。

2018年の9月に学芸文庫の編集長の北村さんとお話をしてお引き受けした際には、おそらく2019年4月までには脱稿できますとお話したように記憶しています。それで冬休みにまとまって仕事をしようと、前著を読み返し、うーーんと唸ってしまいました。自画自賛が好きな人間ですが、これはダメだ、という意味で唸りました。正直言って、自分にがっかりしました。まず、論理が甘い。次に、文庫に適さない。最後に、広がりがない。自分の最初の単著ですし、ものすごく力を入れて書いたのですが、そのままで文庫化はあり得ないということです。これは大変なことになったと思いました。

それでも初めは少しずつ前の原稿を直そうと思ったのですが、どうやっても気に入らない。結局、全部書き直すしかないだろうと2019年の正月明けには決断しました。ただ類推から遠ざかって随分と年月が経ち、そこに集中するのは正直言って辛い。また元の本は随分と難しいロジックを使っていて、正直筋を追うのも辛い。そういうことで、入試や期末試験などもあり、3月くらいまでは放っておくしかないと思いました。

さて春休みになり、今やらねば永遠に終わらないと思い、取り組み始めました。朝早くに起き、朝食を皆が食べるはるか前から毎日のように書きました。1、2章は完璧に書き下ろしですし、3章は博士論文の大幅な修正という感じです(前の本の時にもそうでしたが、6時台くらいから始めると調子がいいです)。学期が始まるとだいぶペースが落ちましたが、なんとか連休明けくらいまでに一応最後まで書きました。ただ読み返すと酷い文章で、気分がどん底まで落ち込みました。その時、大学院の卒業生の関根聡子さん(神奈川県立保健福祉大学講師)が、読んで、チェックをしても良いと言ってくださいました。そして彼女からのコメントに基づき、9月くらいにはだいぶまともなものが出来上がりました。関根さんには心から感謝します。またこの過程でPCの読み上げ機能なども使い、おかしな表現、分かりにくい表現がないかもチェックしました(ものすごく疲れました)。

10月くらいからは実際の出版に向けての微調整、修正などを行いました。この間、東大の植田さん、名古屋大の川合さん、明治学院大の櫻井さん、早稲田大学の井上さんなどから、コメントなどもいただき、修正を重ねました。12月にこちらとしての最終稿を提出し、1、2月で校正で、3月出版となりました。チェックしていただいた、関根さん、コメントいただいた諸先生に心より感謝します。また北村さんを始め、筑摩書房の方々にも深く感謝します。

内容、主張についてはまた別途書くことにします。

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